会社設立の失敗事例~失敗回避のために~

会社といえば株式会社だと思っており、他の選択肢がなかった

妻と二人で輸入雑貨販売の会社を立ち上げました。まずはネットショップで実績を作りながら資金を貯め、将来的には小さな店を持ちたいと思っています。とはいえ、人を雇うような大きなビジネスを目指しているわけではありません。会社設立にも意外とお金がかかり、もう少し個人として事業をするなど、助走の期間が必要だったかなと不安になっています。
最近、「合同会社」というものがあると聞きました。私は会社といえば株式会社しかないと思っていたのですが、他の会社形態はどのようなメリットがあるのでしょうか?

株式会社以外の会社形態についても押さえておきましょう。

現実的には株式会社か合同会社を選ぶことになります。合同会社は、株式会社と比べ設立コストが低い、決算公告の必要がなくランニングコストが安いなどメリットもありますが、デメリットもあります。これらを把握した上でビジョンに合った形態を選んでください。

解説

選ぶなら株式会社か合同会社

合同会社・合資会社は、社員(=出資者)が出資額の範囲を超えて責任を負うことになります。設立時の費用がおさえられたり、事務手続きが簡単だったり、決算公告の義務がなかったりするため、決算書を公表しなくていいなどのメリットはあるのですが、経営陣が直接リスクを負うこれらの形態をあえて選ぶ人は現在ほとんどいません。
一方、合同会社は株式会社と同じく「間接有限責任」、つまり出資者が出資した範囲内で限定的に責任を負うことになっており、この形態を選ぶ人はいます。
合同会社とは株式会社を小さくしたようなイメージで、小規模な事業をするのに向いています。設立コストがおさえられ、決算公告の義務がありません。
ですから、会社を設立して事業をはじめる際には、株式会社か合同会社のいずれかを選択することが多いのです。

解説

合同会社のメリット・デメリット

まだそれほど認知度は高くありませんが、近年急増している合同会社のメリット・デメリットをまとめておきます。

<メリット>
  • 設立費用が安い

株式会社の登録免許税は15万円ですが、合同会社の場合は6万円です。合同会社は公証人による定款認証が必要ないので、その費用5万円も必要ありません。

  • ランニングコストが安い

決算公告の義務がないため、官報掲載費約6万円がかかりません。また、役員の任期の制限がなく、役員の変更手続も不要であるため、定款変更の費用がかかりません。

  • 経営の意思決定や利益配分の自由度が高い

株式会社であれば、基本的に配当金額や経営参加件は出資金額に比例します。合同会社の場合、経営の意思決定プロセス、利益配当は定款に定めることによって自由に決めることができます。

<デメリット>
  • 認知度が低い

合同会社という会社形態は2006年の会社法改正によって生まれた新しい形態なので、認知度が低く、株式会社に比べると信用力が劣る場合があります。

  • 社員同士の意見で対立が起きると、意思決定がストップするおそれがある

合同会社では出資者のことを社員と呼びます。社員と経営者は一致します。定款は社員全員の同意により決定し、業務遂行権も原則として社員全員に与えられていますので、対立が起きた場合には意思決定がストップしてしまう可能性があります。

なお、社員全員の同意があれば、株式会社に組織変更することも可能です。ですので、かけられる費用の少ない最初は合同会社を設立し、経営が軌道に乗ってきたら株式会社に組織変更するのも一つの手です。

法人設立前の売上を、第1期の売上に含めたい

フリーのデザイナーとして仕事をしていましたが、だいぶ売上も立つようになってきたので法人化することにしました。これを機に「デザインコンサルティング」という新たなメニューを作り、ホームページに掲載しました。
すると、早速発注があったため、売上が上がりました。ただ、法人の設立登記が予定より遅れてしまったため、まだ登記が完了していません。クライアントに対しては法人名を名乗って仕事をしていますし、わりと大きな金額をいただいています。この新メニューの売上は、法人の売上に含めたいのですが。

個人事業から法人成りをする場合、売上・経費ともに設立前のものでなければ個人事業の損益として計算する必要があります。

今回のケースでは、法人ではなく個人事業の売上となります。法人成りをするときには、どのタイミングで設立登記するかしっかり計画を立てましょう。

会社設立前に売上が発生したり、経費が発生したりすることがあります。

解説

個人事業から法人成りする場合

会社設立前の売上は、原則として登記をする前の組織体、つまり個人に帰属することになっています。1日前だったとしても、会社設立前の売上・経費は自噴事業の損益に含めなければなりません。
今回のケースは、個人事業から法人成りをしていますので、法人設立前に発生した売上事業として計上しなければなりません。
設立時期や取引状況を十分考慮して、事業計画を立てる必要があります。

 

会社設立前に支出してものは費用にならないと思い、領収書を捨ててしまった。

家でデータ入力等ができる主婦を集めて、事務処理代行の会社を設立しました。この事業を説明するために開いたお茶会費用やチラシ印刷台は会社設立前に支払ったので経費にならないと思い、領収書をすててしまいました。

会社設立前の支出も、領収書を保管しておきましょう。

設立後に1期目の費用として計上するか、資産計上して償却していくこともできます。

解説

会社設立前の経費は、大きく分けて会社を法律的に作るための「創立費」と、営業を開始するための「開業費」の2つが考えられます。

創立費

登録免許税、定款や諸規則作成費用、会社設立のための司法書士への報酬、株券印刷費用、金融機関の取扱い手数料、その他会社設立事務に要する費用

開業費

土地・建物の賃借料、広告宣伝費、関係者との飲食代など接待交際費、従業員への給料、準備のための交通費、印鑑代、名刺大など営業を開始するための費用

会社に資本金が払い込まれる前に発生したこれらの費用は、会社が支払うことができません。いったん個人で立て替えておき、「創立費」「開業費」といった試算に計上して償却することができます(事例53「開業費の節税メリットを生かしていない」参照)。
今回のケースで、説明会費用やチラシ印刷台は営業を開始するために支払っていますので、開業準備費用にあたり、1期目の費用として計上できます。領収書はきちんと保管しておきましょう。

資本金1円で会社を設立する

サラリーマンから独立し、株式会社を設立して事業をはじめたいと思っています。資金はあまりありませんが、いまは資本金1円でも会社を作ることができるそうです。どうせなら資本金1円で会社を作り、運転資金として必要な分は金融機関からか利用可と思います。

1円でも会社設立は可能ですが…

現実的には運転資金・融資・対外的な信用などの面から併せて考え、資本金額を決定する必要があります。

解説

2006年の新会社法の一番の目玉は、最低資本金額の規制が無くなったことです。それまでは、1000万円の資本金が必要でしたが、資本金1円でも株式会社を設立することができるようになりました。それで、「1円起業」という言葉よく聞かれるようになりました。しかし、現実問題としては1円では起業できません。会社設立のためにも30万円程度の費用がかかりますし、事業を行っていくには運転資金が必要です。
資本金は事業を運営していくのに大事な元手となります。通常、会社を設立してすぐに取引先から入金が十分にあるということはありません。資本金が1円しかなければ、取引先から入金があるまで、必要なものを買うことができなくなってしまいます。
今回のケースでは、運転資金は借入を起こして…と考えていますが、資本金が1円では融資を受けるのも難しいです。借入を申し込んだ場合、融資担当者は資本金を見ます。既存の会社の場合は、金融機関は直近3期分の決算書から、会社の安全性をチェックします。創業融資の場合は、まだ決算書がないので、どれだけ自己資金を用意したかが安全性を見る指標になるのです。なお、日本政策金融公庫の「新創業融資」は、自己資金の2倍が融資の限度額となっています。

資本金を親から借りたが、信用書はとくに作っていない

会社を設立するにあたり、資本金500万円を両親から借りました。事業が軌道に乗ったら、少しずつ返済していくつもりです。身内からの個人的な借金なので、借用書のようなものはとくに作っていません。

借用書を作成し、定期的に返済をします。

そのほかにも、両親からの資金援助を受ける際の方法を確認しておきましょう。

解説

1.個人的に資金の贈与を受ける

両親から贈与を受けた場合は、贈与を受けた起業家個人として贈与税の申告・納税が必要になります。ただし、年間110万円までの贈与であれば、贈与税は発生しません。

解説

2.個人的に資金の貸与を受ける

両親から起業家個人として資金を借ります。借りたときに税金は発生しませんが、借りたという証拠がないと贈与だとみなされ、贈与税が発生するおそれがあります。借用書を作成する必要があります。

解説

3.会社に出資してもらう

会社の株主になってもらう方法です。資金的な余裕ができたら、両親から株を買い取ることで出資関係を解消することもできます。

解説

4.会社に融資してもらう

会社として両親に資金を借りる方法です。会社が返済をしていくことになります。2と同様に借用書が必要です。

今回のケースは「2.個人的に資金の貸与を受ける」に該当しています。贈与とみなされないために、借用書を作成しましょう。借用書には、借入金額・利息・返済期間等の借り入れ条件を明記してください。

事業開始後、資金が不足したら融資を受けようと考えている

カフェを開業した者です。当初は、創業の融資を受けようと考えており、日本政策金融公庫を使おうと思っていました。小さな会社でも借りやすいと聞いたからです。しかし、設備投資分はギリギリですが自己資金でまかなえたので、借り入れをするのはやめました。事業を行っていく中で、資金が不足したときはお世話になろうと思っています。

事業をはじめたばかりなら、創業融資を受けられる可能性があります。

資金計画を立て、検討してみてください。また、日本政策金融公庫以外にも、融資制度を持っている機関の特徴をおさえておきましょう。

失敗のポイント

自己資金ギリギリで事業を開始し、足りなくなったら借りようと安易に考えているようです。日本政策金融公庫の融資制度は創業時にとても利用しやすい制度ですが、期中に不足した運転資金を借りるとなると、難しい場合があります。

解説

民間の金融機関の融資

「融資」といって多くの人が最初に思い浮かぶのは、民間の金融機関ではないでしょうか。都市銀行は融資制度の種類も豊富で、民間の金融機関の中で利率が低めであることが多いです。そのほか、民間の金融機関の融資の特徴は次のとおりです。

都市銀行基本的に、大企業向け。
技術力や営業力よりも財務内容を厳しくチェックされる。
融資の審査は迅速で、回答は数日以内、実行まで1週間程度。
金利も安め
地方銀行メインターゲットは地元の大企業や、比較的規模の大きい中小企業。
融資担当者との信頼関係が重要
信用金庫小さな会社でもそれほど敷居が高くない。
融資担当者との信頼関係が重要。地域への貢献度や、自社の将来性をアピールするとよい。
ノンバンク審査が早く、短期間で借り入れできるが金利が高い。
必要書類が少なく、審査基準はそれほど厳しくない。
簡単に借りられる反面、金利が高く、返済額が大きくなる可能性があるので、事前に返済計画を検討しておいたほうがよい。

解説

創業時に最も利用しやすい、日本政策金融公庫と地方自治体の制度融資

今回のケースに出てきた「日本政策金融公庫」とは、株式の100%を政府が出資している政府系の金融機関のことです。個人事業者に対する小口の事業資金の融資、創業支援などを行っており、とくに開業資金などを民間の金融機関から借りるのが困難な場合、強い味方となります。
たとえば「新創業融資制度」は、これから事業をはじめる会社または事業をはじめて間もない(税務申告を2期終えていない)会社が無担保・無保証で融資を受けられる制度です。不動産などの担保を持たない個人や中小企業が最も借りやすい制度です。ただし、金利は高めに設定されていること、返済期間が最長でも7年と短いことなどのデメリットもあります。
担保の差し入れ・保証人のあてがあり、今後事業の拡大が見込まれている場合は、金利が安い「新規開業資金」という融資があります。

いずれにしても、開業時は融資を受けるチャンスです。ギリギリの自己資金で運営し、足りなくなったら借りるというのは危険かもしれません。
融資を受けるためには書類を準備したり審査があったりと時間が掛かりますし、実績のない間は、開業時より借りにくくなるのが通常です。

なお、地方自治体の「制度融資」を利用して、銀行から借りる方法もあります。制度融資とは、地方自治体と信用保証協会、銀行など金融機関の三者が協力して資金を貸し出す制度のことです。財務基盤が弱い、実績が乏しいという理由で、通常の融資が通りにくい場合も、この仕組みを使って借りることができる場合があります。日本政策金融公庫よりは少し審査が厳しい面もありますが、自治体によって金利の優遇措置を設けているなどメリットがありますので、検討してみましょう。
地方自治体の融資制度は、条件や限度額などが各都道府県や市町村によって異なります。会社の所在地である地方自治体や保証協会のサイト・窓口で確認してください。

数年前に会社を経営していましたが、倒産させてしまい、自己破産の手続をとりました。

また新たに会社を設立して、事業に再チャレンジするつもりです。ただ、自己破産者は取締役になることができないので、代わりになってくれる人を探そうと思っています。

復権するまでの人は取締役になることができませんでしたが、今は可能です。

過去に自己破産した人も取締役になることができます。ただし、業種によっては許認可の取得ができない場合があるので確認して下さい。

解説

以前は、自己破産した人は、その手続を開始してから免責の決定を受け復権するまでは取締役になれませんでした。

中小企業では経営者が会社の債務を個人保証していることが多く、会社が破産すると結果として経営者も自己破産するケースが多く見受けられました。経営者が自己破産したことを理由に、再度市場に参入することができないとなると、経済活性化にブレーキをかけてしまうおそれがあります。そこで、新社会法ではこの欠格事由がなくなり、復権を得ていない人も取締役にできるようになりました。かつて事業に失敗した人も、起業して再チャレンジできるようになったわけです。

ただし、会社法上は取締役になることが可能でも、各業種法上、許認可が取得できない場合があります。たとえば、建設業は、破産後復権を得ていない人は欠格要件に該当し、許可を取得することができません。会社を設立しても、営業ができなければ意味がないので、許認可が必要な業種の場合は事前によく確認しましょう。

なお、取締役が任期中に自己破産した場合は、民法の規定により委任関係が終了し、自動的に退任することになります。しかし、すぐに株主総会を開催して、再度取締役に選任することができます。

ただし、退任・再任のいずれも登記が必要です。

取締役になることができない人

  • 法人(株式会社含む)
  • 成年被後見人または被保佐人
  • 会社法、証券取引法、破産法、民事再生法など会社関係の法律に違反し、刑の執行が終わるまで、またはその執行を受けることがなくなった日から2年を経過していない人
  • 上記以外の法令の規定に違反し、禁固以上の刑に処せられ、その執行を終えていない人、またはその執行を受けることがなくなるまでの人(執行猶予中の人は除く)

株券を発行するのを忘れていました。どのように作ったらいいでしょうか?

社会福祉系の会社を設立するにあたり、両親と叔父が出資してくれることになりました。とてもありがたく、早く事業を成功させてお返ししたい気持ちでいっぱいですが、先日、叔父が「株券は?」と聞いてきたので、焦っています。

以前は、株券は発行するのが原則でしたが、新会社法施工に伴い、株券不発行が原則となりました。

株券を発行したい場合は、定款に株券を発行する旨を定めれば発行できます。しかし、株券発行のデメリットを考えると原則どおり株券を発行せずに株主名簿で管理するのがいいでしょう。

解説

旧商法では、原則としてすべての株式会社は株券を発行しなければならないとされていました。株券を発行しない会社は定款に株券不発行の旨を定める必要があったのです。しかし実際には上場会社を除いて株券を発行する会社は少なく、株券の管理や紛失等のリスク、流通、株券の発行のコスト等の問題があったため、2006年の新社会法施行に伴って株券の発行しないほうが原則となりました。新社会法施行後に設立される株式会社においては、定款に株券を発行する旨の定めをしない限り、株券を発行する必要はありません。

株券を発行したい場合は、定款に株券を発行する旨を定めます。株券を発行する会社を「株券発行会社」といい、株式発行会社の場合、株券を譲渡するときには株券の引渡しが必要となります。株式譲渡制限会社(すべての株式に譲渡制限をつけている会社のこと)では、株券を発行する旨を定めていても、株主から請求されるまで、株券を発行しなくてもよいことになっています。

株券を作るには、商圏印刷会社に委託するか、市販の株券用紙に株数等必要事項を記載します。

株券を発行しない場合は、株にし名簿によって株主を管理します。株券不発行かいしゃにおいては、株主はその株主たる地位を証明できるのは原則として株主名簿によってのみとなるので、株主名簿を紛失してしまうと、立証は困難です。

ただ、今回のケースのように、株主が親族である場合は地位の証明が問題になることはないでしょう。株券発行のデメリット(管理・紛失等のリスクや発行のコスト等)を考えると、現在の原則通り、株券は発行せずに株主名簿によって管理することがいいと思われます。

なお、既存の株券発行会社が株券不発行会社に移行するためには、定款に株券を発行しない旨の定めを置く必要があります。

会社設立後に事業を始めるための許可申請が必要なことを知りました。許可をもらうには、二種免許とヘルパーの資格が必要とのことです。

介護タクシー事業を始めようと思い、そのための会社を設立しました。

しかし許認可の要件を満たしていなかったため、営業が始められません。

行いたい事業は許可が必要なものであるのか事前に調べ、必要な場合はその期間や要件を把握した上で進めましょう。

今回のケースでは、会社設立後、都道府県への介護指定申請、運輸支局へ介護タクシー申請書類一式を提出し、法令試験を受けます。そのほか運賃の届出や車両の登録等も必要になります。

解説

事業の内容によっては、行政庁の許可、認可を受けなければならないもの、届出をしなければならないものがあります。適正な手続をしておかないと、刑事罰を受けたり、営業停止などの処分を受けたりするので、十分注意しなければなりません。

許認可申請は取得するまでに時間がかかるものが多くあります。会社設立の準備が整っていても、許認可を取得できなければ営業を始めることができませんので、早めに要件を確認して申請することが重要です。

会社設立の届出をしていません。これまで登記以外にはとくに届出を行っていません。

半年前に株式会社の設立登記を済ませ、事業を行っています。自分1人では手が回らなくなってきたので、人を雇うことを検討しています。人を雇う場合は、労働保険や社会保険の手続が必要になり、何か届け出措しなけばならないと思うのですが。

会社設立後2ヶ月以内に「法人設立届出書」を税務署に提出する必要があるほか、期限が決められているものがあるので、早めに準備しましょう。

主に税無関係の届出をおさえておきます。

解説

会社設立をしたら、税務署などいくつかの届出書類を提出する必要があります。業種によって保健所や警察署に特定の届出を提出しなくてはなりませんが、全ての事業に共通しているのは、税務関係の届出です。税務署に提出すべき書類には、以下のようなものがあります。

  • 法人設立届出書
  • 青色申告の承認申請書
  • 給与支払事務所等の開設届出書(任意)
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(任意)
  • 棚卸資産の評価方法の届出書(任意)
  • 減価償却資産の償却方法の届出書(任意)

法人設立から2ヶ月以内、青色申告の承認申請書は3ヶ月以内等、提出期限が定められているものもありますので、早めに準備しましょう。

事業の最も忙しい時期が決算期となってしまいました。決算準備に時間を取られるので大変です。

資本金1000万円未満で会社を設立しました。消費税免税のメリットを最大限に活かしたいと思い、12ヵ月後を決算月として事業年度を設定したところ、繁忙期と決算期が重なってしまいました。

株主総会の特別決議等で決算期を変更することができます。

消費税免税のメリットに気を取られて、繁忙期と決算期が重なってしまいました。決算時期は業務負荷が高まるので、業務が忙しくない時期に設定したほうがいいでしょう。

解説

会社設立の際に、必ず決めなくてはならない事項の一つに決算期(事業年度)があります。決算期をいつにするかはとくに決まりはありません。それぞれの会社が自由に決めることができます。(12ヶ月を超える事業年度は認めれれていません)。慣習的に3月を決算期にしている会社も多いですが、なんとなく決めてしまうと不都合が生じることもあります。

決算期を決めるときは、次のような観点から検討することが必要です。

1.業務負荷の観点

決算前後には、決算作業や棚卸等、特別な業務が発生するため、業務負荷が高まります。決算期から2ヶ月以内に税務申告をしなければなりませんが、業務の繁忙期と重なってしまうと大変です。忙しい時期を避けて決算期を設定するのがおすすめです。

2.消費税の免税期間の観点

資本金が1000万円未満の会社の場合、最大2年間は消費税の納税が免除される場合があります。この消費税免税のメリットを最大限に活かすように、決算期をできるだけ先にするというのも一つの考え方です。

消費税は、2年前の事業年度の売上をもとに課税か免税かを判断されます。設立して最初と1期目・2期目は、2年前の売上がありませんから、消費税納税が免除されるのです。

ただし平成25年より、資本金1000万円未満の会社でも、無条件に「設立後最大2年間は免税事業者」というわけではなくなりました。第1期の上半期の売上(または給与等の支払総額)が1000万円を超える場合は、第2期の免税が免除されないことになったのです。例外として、第1期が7ヶ月以下の場合はこれまでと同じように免税になります。

したがって、1期目の最初の6ヶ月の売上または給与等支払額が1000万円を超える見込みが無い場合は、1年目の事業年度が12ヶ月になるように決算期を設定し、1000万円を超えることが予想されるのであれば、1期目は7ヶ月以下とたほうが有利となります。

3.資金繰りの観点

税金を納める時期(決算後2ヶ月以内)に資金が潤沢にあり、支払に対応できるようになっていることも重要です。

ボーナスの時期、業種的に現金売上が少ない時期など、資金繰りが大変な時期に重なってしまわないように決算期を設定するといいでしょう。

決算期を変更したい場合は、株主総会の特別決議等により定款を変更します。そして、税務署・都道府県税事務所・市町村に「異動届出書」と定款変更の議事録を提出します。

事業年度を変更しても登記は必要ありませんので、比較的簡単に変更することができます。

事業を始めてすぐに「目的」の変更が必要になりました。

ホームページ制作の会社を設立しました。定款の「目的」の部分には「インターネットホームページの企画・制作」「コンサルティング」のみ記載していたのですが、営業を始めて数ヵ月後、クライアントとの兼ね合いでネットショップを始めることになりました。定款に記載した「目的」以外の事業は行うことはできないとのことで定款を変更しなければならないようです。

会社は、定款に記載した目的以外の事業を行うことができません。

将来行う可能性がある事業はあらかじめ記載しておくことにしましょう。

解説

定款に記載する「目的」とは、会社の事業内容のことです。

会社は、定款に記載した目的以外の事業は行うことができません。ですから、設立後すぐに行う事業だけでなく、将来行う可能性のある事業、興味のある事業については入れておきましょう。目的を追加・変更するには変更の登記が必要となり、登録免許税3万円がかかります。

ある程度抽象的な表現でも登記は可能ですが、許認可が必要な事業については、それぞれの許認可の監督官庁に文言を確認しておきましょう。表現方法が異なると、許認可がおりない場合があります。

法律上、目的の数に制限はありません。しかし、第三者が「この会社は何が本業なのだろうか?」と不審に思うおそれがあります。中小企業なら10程度におさめておくのが無難です。

目的は箇条書きにして順に番号を振ります。最後の項目は「前各号に付帯または関連する一切の業務」としておくのが一般的です。

「目的」記載例

  • インターネットホームページの企画・作成
  • 経営コンサルタント及び各種マーケティングリサーチ業務
  • 広告代理業又は広告業
  • 印刷物の企画・制作
  • 日用品雑貨の販売
  • 写真・ビデオ等の映像の企画及び撮影並びに編集
  • 生命保険代理業
  • 前各号に付帯または関連する一切の業務

銀行口座開設のための準備をしていませんでした。

会社を設立して2週間ほど経ちました。わりとすぐに売上が上がり、請求書を出すことになったのですが、まだ銀行口座を作っていません。法務局で「登記事項証明書」を取得し、それを持って銀行の窓口に行きました。しかし、会社の印鑑証明や定款のコピーが必要と言われ、審査にも意外と時間がかかるようです。

会社設立から「登記事項証明書」が取得できるようになるまでに1~2週間、講座開設の申し込みをしてから講座ができるまでは約2週間かかります。

スムーズな講座開設のため、事前に必要書類を確認して、準備しておきましょう。犯罪防止のため、審査が厳しくなっていますので、健全な事業を営んでいることがわかるような資料も必要かもしれません。

解説

金融機関で法人口座を開設するのは、登記手続きが完了してからになります。口座開設に必要な「登記事項証明書」は、登記が完了しないと取得できないからです。一般的に、法人口座の開設には次のものが必要です。

  • 口座開設申込書(銀行に備え付けのもの)
  • 登記事項証明書
  • 定款のコピー
  • 会社の印鑑証明書
  • 代表者印
  • 銀行印
  • 本人の身分証明書

最近は、新たに口座を開設するときの審査が厳しくなっています。口座が売買されたり、振り込め詐欺などに利用されたりすることが問題になっているため、慎重になっているのです。

健全な事業を営もうとしていることがわかるように、事務所やお店の賃貸契約書、名刺やパンフレット、代表者の経歴書なども準備する必要があるかもしれません。スムーズに口座開設できるように、早めに必要書類について確認しておくといいでしょう。

口座開設の申し込みをしてから、審査を通過し、口座ができるまでに約2週間ほどかかります。会社の設立登記をした日から、登記事項証明書が取得できるようになるまでに1~2週間かかりますので、3~4週間後にやっと法人名義の銀行口座ができることになります。事業開始後、早い段階で取引先から入金の予定がある場合は、その時になって慌てないように早めに準備しておきましょう。

法人口座開設の一般的な流れ

窓口・電話などで必要書類の確認

必要書類の提出・面談

審査結果の連絡

窓口で口座開設依頼書に記入・提出

キャッシュカードの到着

商号の調査をせずに名刺やパンフレットを作ってしまいました。

登記をしようとしたら、私が考えていた社名が使えないことが判明しました。同じビルの中にたまたま同じ社名の会社があったのです。せっかく印刷した名刺やパンフレットですが、修正しなければ使えなくなってしまいました。

現在は、「同一住所に同一商号の会社は登記できない」という緩やかな規制になっています。

商号を決める際には、登記上のルールに気をつけなければなりません。

商号のルールについておさえておきましょう。

解説

会社の名称=商号は、定款に記載され、登記されます。商号にはいくつかのルールがあります。

必ず「株式会社」と入れる

商号の前後のどちらかに「株式会社」とつけます。

「株式会社」に代えて、「K.K.」「Co.,Ltd」といった英文表記を登記することはできません。

使えない文字がある

商号に使える文字は、ひらがなやカタカナ、漢字、アルファベット、数字などに限定されています。絵文字や感嘆符(!)などの記号、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲといったローマ数字は使えません。

同一住所に同一の商号の会社は登記できない

以前は、同一市町村内において同じ商号は使うことができないとされていましたが、この規制は緩やかになり、現在は「同一の住所で同一の商号は使うことができない」とされています。

定款に載せる本店の住所は、部屋番号までは必要としないので、同じビルの中のたまたま同じ商号の会社があることはあり得ます。ですから、同一の本店所在地に同一の商号の会社がないか事前に調べる必要はあります。

同一の商号の会社が存在するかどうかは、法務局に備えてある「照合調査簿」で無料で確認できます。インターネットの「登記情報提供サービス」を使うなどしても調べることができます。

また、商号として使いたい言葉が商標登録されていると、商標権侵害の問題が発生する場合があるほか、有名な会社やブランド、商品、人の名前などを勝手に使うことは不正競争防止法で禁止されているので、注意が必要です。

そのほか、「〇〇事業部」のように、会社の一部門を表す言葉を使用できない、公序良俗に反する表現は使えないといったルールがあります。

法人成りをしたが、個人事業の廃業届出書の提出を忘れていた。

個人事業として2年ほどやってきましたが、利害関係者が増えてきた関係で法人成りをすることにしました。7月1日に会社設立登記をしました。個人事業の廃業届は出していません。

個人事業としては何もやっていない状態なのですが、所得税の予定納税の通知書は届いており、2期目(11月)の納付期日が迫ってきています。

廃業届は原則として、廃業から1ヶ月以内に提出します。

所得税の予定納税通知書が届いている人は、「予定納税額の減額申請書」を期限までに提出するか、一度納税をして還付の手続きをします。

解説

法人成りをした場合、個人事業は廃業することになります。ここでは、法人成りの一般的な手順について押さえておきましょう。

個人事業者が法人を設立して、事業形態を移行させることを「法人成り」といいます。

法人成りをする場合には、継続している取引に支障が出ないよう、より慎重にスケジュールを組む必要があるでしょう。

法人成りの一般的な手順は以下のようになります。

  1. 会社の概要と設立スケジュールを決める。
  2. 会社に引き継ぐものを決める。
  3. 会社設立登記の手続をする。
  4. 取引先等へ契約変更の届出をする。
  5. 個人事業廃業の手続をする。

法人成りをした年の個人の確定申告を忘れていました。

フリーランスから昨年の3月1日に会社を設立し、法人成りしました。昨年2月末までは個人事業としての所得があります。ですので、昨年分は確定申告をしなくてはならないようです。そんな意識がなかったので、慌てています。

1月から廃業した日までの個人の所得と、その年の12月31日までに会社からもらった役員報酬とを合わせて確定申告をしなければなりません。

3月15日までに、確定申告をする必要が有ります。また、法人なりをした場合の、個人事業の最終年度の確定申告について注意点を確認しておきましょう。

解説

法人成りをして、年の途中で個人事業を廃業した場合、その年はこれまでと同じように確定申告をする必要があります

1月1日から12月31日の一暦年について、翌年の3月15日までに確定申告をします。

法人成りをするまでの個人の所得と、会社からもらった役員報酬を合算して申告することになります。会社に自宅を事務所や店舗として貸し出している場合には、不動産所得も併せて申告します。

個人事業の最終年度の確定申告においては、次のような点に気をつけましょう。

  • 売上高

その年の1月1日から、廃業した日までの売上を発生基準に基づいて計算します。廃業した前日に売上があった場合は、個人事業者時代の売上として総収入金額に含めることになります。

  • 貸倒引当金

貸倒引当金は法人に引き継ぐことができないので、すべて戻し入れをします。新たに繰り入れてこの年の経費にすることはできません。

  • 貸倒損失

廃業した日の属する年に生じた貸倒損失は、必要経費に計上することができます。個人事業を廃業した後に貸し倒れが生じた場合で、事業を廃業しなければその年の必要経費にできたものについては必要経費に算入することが可能です。

  • 青色申告の特別控除

年の途中で廃業しても、青色申告の特別控除を月割計算する必要はありません。65万円または10万円の全額を控除することができます。

  • 個人事業税

通常であれば個人事業税は翌年の費用として計上しますが、廃業した年度に限って、課税見込み額を必要経費に算入することができます。

個人事業税の見込額計算方法

(A±B)×C÷(1+C)

A:所得金額  B:調整金額(事業主控除など)  C:事業税の税率

法人なりをしたいが、個人事業時代の資産をどう引き継げばいいのかわからない。

現在の事務所、営業車、パソコンなどは会社でも引き続き同じものを使っていきたいのですが、どのような処理をすべきなのかがわかりません。個人からの出資というかたちになるのでしょうか。また借入金も少しありますが、これは個人で返済しなければなりませんか?

借入金を会社に引き継ぐには金融機関の同意が必要なので、担当者に事前に相談しましょう。

事務所は賃貸であればあらかじめ大家さんに事情を話し、あらためて会社として賃貸契約を結び直します。

解説

法人成りの際には、個人事業時代の資産・負債について、どれを引き継ぐべきか、どうやって引き継ぐかを考える必要があります。

売掛金・買掛金は、あえて会社に引き継ぐ必要はありません。これまでどおり個人口座に入金してもらう・個人で支払うことにしたほうが簡単です。引き継ぐ場合には、取引先に通知し、承認をもらう必要があります。

事業用の借入は、会社に引き継ぐべきですが、金融機関の同意が必要です。あらかじめ相談して、内諾を取っておきたいところです。金融機関が認めない場合は、個人事業者として引き続き返済することになります。事業用資産のリース契約も、リース会社の同意が必要になりますので、担当者に相談しておきましょう。

そのほか、固定資産の個人事業から会社への引き継ぎ方には、次のような方法があります。

  • 売買契約

個人事業者から会社へ資産を売却する方法です。会社と売買契約書を締結して、代金のやりとりをします

個人事業者は、譲渡益に応じて所得税が生じます。

  • 現物出資

個人事業者から会社へ、金銭以外の資産を出資する方法です。営業車やパソコンなど、時価によって評価し、出資します。

  • 賃貸借契約

個人事業者から会社へ資産を貸す方法です。賃貸借契約書を締結して、賃貸料のやりとりをします。建物や土地等は売買もしくは現物出資をすると、登録免許税や不動産所得税等が会社に発生することがあるので、検討すべき方法でしょう。ただし会社から個人に賃貸料の支払が発生すると、法人成りしたあとも個人はその収入を確定申告する必要があります。

対外的信用を得るため会社を設立したが、デメリットを考えていなかった。

フリーのライターとして2年ほど仕事をしてきました。単発の仕事が多く、新規の仕事を獲得するのに苦労しています。実績もそれほど多くないので、なかなか信用を得られないです。そこで会社設立をすることにしました。会社として仕事を請けるようにすれば、発注側も安心感があると思います。大手企業は法人でないと取引しないと聞いたこともあります。

しかし、会社にしたら思った以上にコストがかかり、早くもフリーに戻ったほうがいいのでは…という気がしています。

しかし同時に、設立コスト、維持コストがかかる、決算手続が煩雑になる等のデメリットもあります。

法人化のメリット・デメリットを確認し、よく検討しましょう。法人化のメリットがあまり活かせないようであれば、現段階では個人事業として継続したほうがいいかもしれません。

解説

法人化については、税金面でのメリットや対外的信用がよく言われます。確かに多くのメリットがありますが、反面、設立や維持に手間と費用がかかる等のデメリットもあります。

法人化のメリット・デメリットを簡単にまとめておきましょう。

【法人化のメリット】

  • 対外的信用が得られやすい

会社は登記されており、決算書を公開しています。法務局に行けば、誰でも会社の概要を簡単に把握することができます。そのため、個人事業に比べ社会的な信用を得やすいです。

  • 必要な資金を集めやすい

個人事業には出資という概念がないので、第三者から資金を集めるには借入か、税金のかかる贈与になります。銀行融資も難しいのが現状です。

会社は、第三者から出資を募ったり、融資を受けたりすることができ、個人事業に比べて資金を集めやすいといえます。

  • 事業が継続する

個人事業では、事業は事業主に依存しますが、法人の場合は解散しない限り事業は継続します。

  • 債務責任が有限

万が一会社が倒産しても、借金をするのは会社であって、個人ではありません。株主は自分が出資した金額の範囲内で債権者に対して責任を負っています。一方、個人事業の場合は、事業に失敗すれば、負債はすべて個人の責任です。

  • 役員報酬を払って節税できる

個人事業と法人とでは税率の構造が違うので、収入によっては税務上有利な設定をすることができます。「給与」として会社から受け取ることにより、されリーマンとおなっじような経費の控除(給与所得控除)ができ、また、家族を従業員にして、給与を支給することもできます。ただし、勤務実態が必要です。

  • 青色欠損金を9年間控除できる

青色申告をしていれば、赤字が出た場合に9年間(平成20年4月1日前に終了した事業年度については7年間)はその赤字を翌期に繰り越すことができます。個人事業の場合は3年間です。

【法人化のデメリット】

  • 交際費の限度額

個人事業の場合は接待交際費に上限はありませんが、法人では、経費として認められる上限が定められています。

  • 住民税の均等割課税

利益があってもなくても、法人住民税の均等割が課税されます。その金額は資本金額と従業員数によってことなりますが、最低でも年あたり7万円は納める必要があります。

  • 決算手続きの煩雑化

複式簿記による記帳と、貸借対照表・損益計算書等の決算書を作成しなければなりません。

  • 維持に費用と手間がかかる

会社の移転、役員の変更、増資・減資等がある都度、変更の登記を行う必要があり、登録免許税がかかります。

  • 事業で儲けたお金を個人で自由に使うことができない

会社のお金を個人で自由に使うことはできません。役員報酬は年に一度、事業年度開始の日から3カ月以内にしか変更できないので、儲けに応じて取り分を変更することはできません。

クレジットカードで支払った経費について、会計処理をする日が定まっていない。

法人用クレジットカードを利用しています。いつもは、講座の引き落としがあったときに、カード会社からの利用明細書をもとに経費計上をしています。しかし先日、研修費をクレジットカードで支払った際、わりと高額だったので早めに会計処理したほうがいいと思い、契約日(クレジットカード利用日)で経費計上をしました。

会社の経理は原則として「発生主義」に基づいて会計処理をすることが必要です。利用日ベースで処理するのが、正しい方法です。

費用が発生した日に「費用/未払金」、決済日に「未払金/預金」と仕訳をします。

解説

会社の会計は、原則として「発生主義」で行わなければなりません。

発生主義とは、お金の動きに関係なく、収益や費用の事実が発生した時点で計上するものです。一方、現金主義では、現金を支払ったり受け取ったりした時点で計上します。

クレジットカードを利用した場合も、原則「発生主義」で処理をしますので、利用日に経費計上をすることが必要になります。

たとえば、4月24日に航空券をクレジットカードで購入したとしましょう。カードの決済日は6月5日です。この場合、現金主義で処理をすれば、

6月5日 旅費交通費/預金

ですが、費用が発生したのはあくまでも4月24日です。発生主知に基づいて処理をすることはと、

4月24日 旅費交通費/未払金

6月5日 未払金/預金

という仕訳になります。

現金主義で処理をしている場合でも、利用日と決済日の間に決算日が来るときは、決算修正で未払処理が必要になります。期間中に発生した費用は費用としてきちんと計上しなければならないのです。

いずれの方法にしても、どちらかに統一してきちんと記帳することが必要です。ある時は利用日で処理し、あるときは決済日で処理をするというのでは、正しく経営の管理をすることができません。

利益は出しているはずなのに資金ショートしそうで困っている。

会社設立をして半年ほど経ちました。取引先も徐々に増え、大きな売上が上がるようになってきました。決算上は黒字です。しかし仕入分の支払や従業員への給与支払に追われ、資金繰りに余裕がありません。利益が出ているのに資金がショートするなんていうことが本当にあるんですね。

自社の資金繰りについて把握できていないようです。利益が出ていても資金繰りに行き詰って倒産することを「黒字倒産」といいます。突然の資金不足を避けるため、資金繰り表を活用しましょう。

資金繰り表を活用して、少なくとも今後3ヶ月のお金の流れは把握するようにします。資金が不足しそうな時期・額等を早めに把握できれば、融資を受ける等の対策を講じることができます。

解説

日本における企業倒産の半数以上が「黒字倒産」といわれています。「黒字倒産」とは、利益が出ていて、決算が黒字であるにもかかわらず資金繰りに行き詰まり、倒産してしまうことです。こうした事態が起こる原因は、入金と出金のタイミングのズレによる資金不足です。

会社の会計は「発生主義」で処理しますから、実際のお金の動きとは別に、取引が発生した時点で売上や仕入の計上をします。ですから、損益計算上は利益が出ていても、その入金よりも経費の支払の方が早ければ資金が不足してしまいます。

こうした事態を起こさせないために、おすすめしたいのが資金繰り表の活用です。資金繰り表とは、将来現金の収入と支出を予測した結果を取りまとめたものです。不足する資金の額や時期が事前に予測できるので、早めに対策を講じることができます。少なくとも今後3カ月の資金繰りの状況は把握しておきたいところです。

資金繰り表は特に決まった形式はありません。集計等の利便性を考えると、エクセル等の表計算ソフトを使うのがいいでしょう。

資金繰りが危うくなったら、早めに対策を練ります。

  • 金融機関からの借り入れ等により資金を調達する
  • 支払を遅らせる
  • 売掛金の早期回収をする
  • 資金を売却する

といった方法で、手元に現金を確保する必要があります。

期中に役員給与の減額をしたい。

当初見込んでいた取引がうまくいかず、思ったほど売上が上がっていません。資金が底をついてきました。自分の役員給与を多角設定しすぎたかもしれません。そこで、いったん、役員給与を下げたいと思います。株主総会で役員給与の変更手続をすればいいでしょうか。

役員給与の変更ができるのは、原則として事業年度開始の日から3ヶ月以内です。減額改定事由に該当しない場合、全額前の給与との差額分が損金不算入となりますので注意しましょう。

役員給与の変更には制限がありますので、最初の段階で十分に検討する必要があります。今回のケースでの減額は、減額改定事由に該当しないと考えられますので、これまでの給与の一部が損金不算入となります。ここでは、減額改定が認められる場合について確認しておきましょう。

解説

会社が役員に対して支払う給与のうち、「定期同額給与」に該当しないものの額は損金にさんにゅうされないこととなっています。

定期同額給与とは、その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものをいいます。

つまり、毎月一定額の給与以外は経費として認められないのです。利益ん応じて賞与を出す、業績連動型で給与を出すといった場合、経費計上ができません(一定の法人は、業績連動型役員給与の支給が、一定の要件のもと認められる)。

役員給与の変更は、原則として事業年度開始の日から3カ月以内でなければ認めれらません。平成19年4月1日以降は、期中の減額改定についても相当の理由が必要となりましたので、注意が必要です。期中の減額改定ができるのは次のような場合です。

1.業績連動型宇瀬喜悪化改定事由による減額改定

経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることを言います。一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったこと等は含まれません。また、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減じざるを得ない事情が生じていれば、これも含みます。

2.職制上での地位の変更、職務内容の重大な変更による減額改定

たとえば代表取締役であった者が平取締役になった、合併等により職制上の地位が変わった等の場合は増額・減額共に認められます。

これら以外で減額改定をした場合、本来の定期同額給与の額は改定後の金額であるとみなされ、改定前の上乗せ部分が損金不算入となります。

たとえば最初の4カ月は役員給与が100万円ー80万円=20万円の4か月分で80万円が損金不算入です。

このように期中の減額改定は難しく、できるだけ避けたいところです。今回のケースでは、最初に役員給与を高く設定しすぎ、会社にお金がなくなってしまいました。事業計画を作成し、その計画に見合った報酬を設定することが大切です。

給与の支払の際に、所得税等を差し引くのを忘れた。

忙しくなってきたので、従業員を2名雇いました。給与を支払うことができるというのは嬉しいものですね。先月25日に、1ヶ月分の給与を支払ったのですが、所得税や社会保険料を差し引くのを忘れたことに気づきました。

給与から差し引くべきものについて確認しておきましょう。

給与を支給する際には、所得税や住民税、社会保険料を控除する必要があります。また、ミスなくスムーズに給与支払ができるように、日にちを決めてフローを作成しておきます。

解説

給与は、毎月1回以上、一定の期日で支払う必要があります。この給与支払から差し引くべきものがあります。

<税金>

  • 所得税

個人の所得にかかる税金。会社が個人の給与からあらかじめ差引き、個人に代わって納める「源泉徴収制度」を取っている。

  • 住民税

前年の所得にかかる税金。市区町村から通知された「特別徴収税額通知書」に基づき、毎月控除する。

<社会保険>

  • 健康保険

病気や怪我の出費に対して自己負担を軽くする制度。大企業や企業グループは組合管掌健康保険に、中小企業等は協会けんぽに加入。保険料は個人の報酬月額と保険料額表から算出。給与から天引きした額と会社負担分を合わせて、当月分を翌月末までに支払う(介護保険、厚生年金保険も同様)。

  • 介護保険

40歳以上になると加入し、保険料を徴収する。

  • 厚生年金保険

民間企業が加入する公的年金制度。老齢・遺族・障害にたいして保障がある。

  • 雇用保険

労働者の生活と雇用の安定のための制度。失業時に失業手当(基本手当)を受給できる。保険料は個人の給与に被保険者負担率(一般の事業は1000分の5)をかけて算出する。雇用保険と労働者災害補償保険の保険料は、年度(4月から翌年3月まで)はじめにおおよその保険料を計算して申告納付し翌年度の初めに清算する形をとる。

給与の支払日には、「基本給など固定的な給与」に「残業手当、通勤手当等の変動的な給与」を加えた総支給額から控除額合計を差し引いて支払います。

健康保険(介護保険)・厚生年金保険については入社月の翌月の給与から控除がスタートします。前月分の保険料を控除することになっているからです。雇用保険料は入社月から控除します。

今回のケースでは、初月の給与について控除を忘れたとのことですので、実際に漏れていたのは「所得税」と「雇用保険料」であると考えられます。(住民税は、その従業員が前職を退職した時期等によります)従業員に事情を説明して、翌月の給与で調整するなどして下さい。

控除のミスは、従業員との信頼関係を崩しかねませんし、所得税を差し引くのを忘れた場合、会社が個人の税金を負担しなければならなくなってしまいます。(会社が徴収主義者なので、個人に代わって納税しなくてはならない)十分注意してください。

給与支給手続きは毎月のことですので、ミスなくスムーズに進めるために、日にちを決めて作業を行えるようにするといいでしょう。

給与支給手続きの流れ

1.出勤簿を締める

「毎月○日」のように決まった日を締日にし、1か月間の従業員の勤怠を取りまとめます。

2.基本給・諸手当を計算

基本給のほか残業手当、通勤手当等を計算します。

3.控除額を計算

装支給が決まったら、そこから社会保険料の控除額・源泉徴収額を計算します。

4.給与明細書を作成

従業員に渡す給与明細書や、給与台帳を作成します。

5.銀行振込の手続き

金融機関への振込で給与を支払う場合は、差し引き支給額を振り込む手続きをします。現金で支払う場合は現金を用意します。

6.給与支払

一定の給料日に支払います。従業員には給与明細書を渡します。

扶養控除申告書をもらい忘れていた。

源泉所得税の安いほうの「甲欄」で計算し、天引きしています。数ヶ月経ってから、従業員の1人に「扶養控除申告書を出していない気がするんですが」と言われました。その従業員は扶養家族がいるとのことです。確かに、扶養控除申告書という書類はもらい忘れていたようです。

「扶養控除申告書」がない場合は乙欄(高い税率)で算出しなければなりません。

「扶養控除申告書」は、従業員が所得税の控除を受けるために必要な書類ですので、すぐに全員から提出してもらってください。本来は給与を支払う日の前日までに提出してもらう必要があります。忘れないように、雇い入れたらすぐに提出してもらうといいでしょう。そして、会社に保管しておきます。

会計帳簿の作成に手が回っていない。

従業員は3名で全員が営業職です。給与計算等の事務処理は、社長である私がやっています。請求や支払いはなんとかやっているものの、経費の精算や帳簿の作成は手が回っていない状態です。決算まではまだ時間があるので、直前までにはなんとかしたいと思っています。

会計帳簿の作成は、経営状態を把握するための重要なものです。

会計事務所に記帳代行するか、会計ソフトを使って自社で記帳をするかを検討し、早めに対応しましょう。

契約書を作成することなく、取引を開始する。

知り合いを通じて、大口の発注がありました。これまで、小口取引が多かったので、とくに契約書なしでやってきましたが、今回は金額が大きいので契約書を作成したほうがいいのかどうか悩んでいます。紹介者もいるので、信用はできると思うのですが…。

トラブルを避けるためにも契約書を作成したほうがいいでしょう。

約束した金額が支払われなかったり、数量や使用に相違があったりした場合、高等の約束では証明が難しくなります。

契約書を作成し両者で1通ずつ保管します。契約書は税務調査の際に開示を求められることもあります。法務上のみならず税務上も重要な書類になるのです。

税金を支払うための資金を準備していなかった。

1期目の決算業務がなんとか終わろうというところです。思ったよりも利益が出て、税金を納める必要があります。80万円です。しかし仕入等にお金を使ってしまって、今は手元にそれだけの資金がありません。税金を支払うために資金繰りを考えなくてはならないとは思いませんでした。

あらかじめ納税金額を計算し、予算に組み込んでおくことが大切です。

利益と手元にある現金とは一致しないことが多いため、税金を支払うためのお金がないということはあり得ます。目安は利益の30~40%です。

事業年度が1年未満のときの注意点を失念していた。

会社設立1期目の決算を迎えるところです。納税のために現金を残しておく必要があるので、法人税がいくらになるか、だいたい計算しておきました。しかし、実際は予想よりも高い税額となりました。繁忙期を避けて決算期を設定したため、初年度は9ヶ月だったのですが、これを忘れていたためです。事業年度が1年未満の場合は、一括償却資産の計算等いくつか月数で考えなくてはならないものがありました。

事業年度が1年であれば3分の1が費用になりますが、事業年度が1年未満の場合は「所得価格×事業年度の月数/36ヶ月」で計算します。

消費税の還付が受けられなかった。

資本金500万円の会社です。設立初年度が終了し、決算業務に追われているところです。1期目は、設備投資に多額にお金を使ったこともあり、赤字となりました。

支払った消費税のほうが多い場合、還付を受けられると知人に聞きました。今は消費税免税事業者なのですが、還付は受けられるのでしょうか。

還付を受けることが出来るのは、原則課税を選択している課税事業者のみです。

免税事業者は還付を受けることができません。